歯の相談室

Q1.むし歯はどうしてできるの? 一度むし歯になった歯は元に戻るの?

 A.質問にお答えします。  脱灰と再石灰化についてお話しましょう。
 最近、テレビのニュ−スや新聞等で話題になっている酸性雨というものがあります。これは大気中の汚染物質である二酸化イオウ(SO2 )と窒素酸化物(NOx)が原因で酸性雨が1970年代から降るようになりました。二酸化イオウ、窒素酸化物は自動車の排気ガスから主に出るものです。その酸性雨は草や木などの植物を強い酸で枯らしてしまいます。また、鉄で出来た建造物などにも影響し、錆などの原因をもたらします。酸性雨の酸の強さはどの位かといいますと、水素イオン濃度指数(PH)でPH.2ないし3程度でお酢やレモン汁と同じ濃度と言われています。
 これと全く同じような現象が私達の口腔内でも起きているのです。それは皆さんがご存じの「虫歯」です。大気汚染の原因は先ほど申し上げた二酸化イオウと窒素酸化物ですが、お口の中の虫歯の原因は歯垢や細菌ではないでしょうか。
糖分や炭水化物を摂るとお口の中の細菌(特にストレプトコッカス・ミュ−タンス菌)がそれらに群がって、デキストランという物質を出し、歯垢を形成し、そして強い酸をだします。そうすると、歯垢や唾液が酸性に傾いてしまい、歯の表面からカルシュウムやリンが溶けだしてしまい虫歯になってしまうのです。その溶かす現象を脱灰といいます。
    
 食事をとると2、3分で歯垢ができ、ペ−ハ−は酸性に傾き脱灰が始まります。その時のペ−ハ−は4ないし5の値になります。脱灰の時間が長く続いたり、酸性度が強い程、虫歯の危険度が増加します。食事が終わり、「ごちそうさま」の後3分後には歯を溶かす程強い酸が作られ、20分間は虫歯の活動が最も盛んになります。しかし、この後20分から40分の間に唾液が歯に付着している歯垢や細菌を洗い流し、ペ−ハ−を上げてくれて、酸性に傾いた唾液を中和し、中性の方に変化させてくれるのです。そうすると、歯の再石灰化が始まるのです。再石灰化とはお口の中の環境が中性になると、唾液の中にはカルシュウムやリン酸イオンなどのミネラル成分が含んでおり、それらが軽い虫歯になっている部分に再付着し固まって再生することをいいます。
    
 食事や間食を摂るごとに脱灰と再石灰化が一日の間に一定のサイクルで繰りかえされています。脱灰と再石灰化のバランスが崩れると、虫歯になってしまうのです。間食(おやつ、清涼飲料水)などは時間と量を決めて食べることが大切です。
 でも、「再石灰化」をあまり過信してはいけません。「唾液にまかせて、自然に再石灰化するから歯を磨かなくてもいいや」と考えないでください。唾液の分泌量の多い人、少ない人、唾液の緩衝能、免疫能力や細菌の数などの様々な個人差があります。特に就寝時は唾液分泌量が少ないですから、虫歯になる危険度が高くなります。虫歯は夜作られるのです。毎食後のブラッシングが大切だということです。

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